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「フォーガットン」:子供のことを忘れられますか? [映画]

 ストーリーについては公式サイトの予告編を見ていただくのが手っ取り早いですが、自分の最愛の子供に関する記憶と記録が消えてしまう。周囲の誰も彼が存在したことを覚えていないという。それどころか、たしかにあった写真まで消えてしまう。だけど主人公の女性は、事故死した彼(息子)の事を覚えている。そして確かに息子が存在したことを、どこまでも探し求める。そういう映画です。
 ミステリー映画について語ることはネタバレという点で非常に難しいですが、ミステリとしての謎の答え自体は高度なものではありません。そこのところに過剰な期待をしなければ、しっかり丁寧に作られた佳作だと思います。

 主役はジュリアン・ムーア。私はこの女優さんが好きです。普通に整った顔の美人だと思いますが、ハリウッド的基準で言えば飛び抜けた美人というわけでもない。でも何故かスクリーンに映っていると見つめてしまう魅力があると思います。「トゥームレイダー2」のコメンタリーで、監督のヤン・デ・ボンがアンジェリーナ・ジョリーのことを、「カメラが彼女に恋をする」と表現していましたが、まさにそんな感じです。アンジェリーナ・ジョリーはハリウッド基準で言っても美人だと思いますけどね。ジュリアン・ムーアの場合は、その演技力と人間性にカメラが恋をするのでしょうか。

 というのも、ジュリアン・ムーアって出演作をよく選んでいるなと思っていて、私はその点でも彼女をすごいと思っているからなのです。面白い企画をしっかり自分で選んで出演している、そんな気がします。とはいえ企画の全てが成功するわけではありませんが・・・。例えば「エボリューション」などは見事なB級で、たぶん失敗映画でしたけど、コンセプトや映像化しようとしているもの自体はとても面白いと思いました。そういう彼女の審美眼、挑戦性が好きなのです。
 かの名作と名高き「羊たちの沈黙」の続編「ハンニバル」において、ジョディ・フォスターのあとを継いでクラリス・スターリング役をやったのもすごいと思いました。また、ジュリアン・ムーアはきちんと自分なりの(羊たちの沈黙から)10年後のクラリス・スターリングを作り上げていたと思います。輝くような才能を持った美人のFBI警察官、華々しいデビューを飾った彼女が、その後組織の中で疲弊していき、すり減らされ、それでも自分に忠実に生きようとしている。
 そのことを彼女は台詞ではなく存在感で語っていました。本当に、得難い女優さんだと思います。

 話を「フォーガットン」に戻しますが、この映画の脚本はかなり好きです。リアリティを失わないギリギリの線をしっかり追求しながら、丁寧な仕事をしていると思いました。映画的にもいろんな見せ場を作りながら、伏線をはりめぐらして、個々のキャラクターとそのエピソードも大切につむいでいって。いい映画、良質な映画はやっぱり脚本だなあと感じます。
 ちなみにキャッチーな映画はまず企画ですね。企画倒れに終わっても、それはそれで面白い。私はその場合企画だけいただいて、脳内補完で遊びます。ま、それはさておき。

 惜しいなと思うのは、映画の内容ではなく広告です。「シックス・センス以来、最も衝撃的なスリラー!」とうたっていますが、それはちょっとどうかと思う・・・。だってこの映画、謎の答え自体はあんまり大したものじゃないんですよ。その点、シックス・センスには及ぶべくもない。というか系統が違う。
 それよりも予告編にあるような親子の絆、失われてしまった幸福な生活、幸福な記憶、その泣きたくなるような大切さ(映像の美しさ、ジュリアン・ムーアの微笑み)。孤立しながらも強く抵抗しつづける主人公の姿、しかしあまりにも強大な敵(というかなんというか)、さあどうしたら解決出来るのか。彼女は「取り戻せる」のか。そこがポイントなのに・・・。(予告編は本当によく出来ていると思います)。

 このコピーはシアトルポスト(アメリカの新聞)が書いたものらしいので、日本の映画配給会社だけに責任があるわけではないでしょうが、それにしても・・・と思ってしまいます。他にも映画の広告においては、内容とのあまりの乖離、かけ離れっぷりに呆れてしまうことが多いからでしょうか。もっとタチの悪い前例の数々から比べれば、この映画のコピーなんてまだまだ良心的な、単に的外れなだけなんですけどね。

 輸入映画の邦題の付け方センスにしても、本当に、映画の広告に関してはなんとかならないのかなーと思います。テレビと違って途中でチャンネルを変えられる(退席される)ことはまずない、普通はたった一度しか観ない、だからとにかく劇場に足を運ばせれば勝ちという考え方でもしているのでしょうか。
 でも今の時代、好きな映画はスクリーンで何度も見るというリピーターも増えていますし、それを意識した映画作りというのも同じく増えています。ネットの普及にみられるように口コミ効果というものも大きくなっていますし、もっと映画の広告にも意識改革が必要だと思うのです。
 意識改革だけの問題じゃなくて、時間がないとか予算がないとかその他もろもろの事情もあるのかもしれませんが・・・。お願いします、頑張ってください。だっていい映画はやっぱり多くの人に見てもらいたいし、観た後に見てよかったなと思って欲しいじゃないですか。「騙された」じゃなくて。
 これって映画そのものだけの責任じゃなくて、映画と観客の相性も大きいと思うんです。自分のニーズに合った映画なら、多少出来が完璧じゃなくても、人は受け入れられるものです。その一期一会な出会いを取り持つのが映画広告ってもんだと思うんですよ。・・・と力説して、この章を終わりたいと思います。

 ともあれこの映画は、地味な良作、佳作好きの方、親子の絆を描かれると涙もろい方、子供に対する親の思いに強く感情移入できる方にはオススメの映画でございます。

公式サイト:http://www.forgotten.jp/


*訂正:トゥームレイダー2の監督はソダーバーグじゃなくてヤン・デ・ボンです・・・。すみません。(本文はすでに修正済みです)。寝て起きたら気が付きました。
 なんでソダーバーグが出てきたんだ自分ッ。たぶん、コメンタリで延々「ここはどうで、これはどうで」という語りが彼を連想させたのだと思います。「トゥームレイダー2」、映画自体の出来はイマイチぱっとしないものでしたが、コメンタリはとても勉強になる映画でございました・・・。(
12日11:25)


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